悲願成就は宮峠トンネルの感無量
戦争映画では有名だと思う『ナバロンの要塞』(”The Guns of Navarone”61年米英合作)をレンタルビデオで見たんだよ。レンタルビデオ屋さんに行って、何を見ようかなーと思いつつ、棚を眺めていたら『ナバロンの要塞』があったもんで、あーこりゃ懐かしいなーもう一回見たいなーと思ってたんだよなーと借りてきたんだけど、思えばウン十年前、まだ映画なんぞ映画館で観るなんて金持ちの道楽だった時代、爪に火を灯す生活をしていたビンボー人には、映画とはテレビの洋画劇場で見ることが唯一の娯楽なのでありまして、そんな折にですね、観たんですよ、日曜洋画劇場ですけど、今は亡き淀川長治さんの解説付きで見たんですよ、ノーカット前後編で見たんですよ、そりゃもうね、血湧き肉躍る大冒険映画の決定版だよ、原作があのアステリア・マクリーンのベストセラーで主演は当時人気絶頂のグレゴリー・ペック、初めから終わりまで見どころばかりでハラハラドキドキのそりゃあもうコーフンして見終わってからも寝れんかったウン十年前のお話、いつかまたもう一回観たいと思ってたんだけど、気がついたらウン十年、時の流れとは早いもので、この機会を逃したらもう永遠に見ることができないだろうと、咄嗟に判断して借りてきたんである。今や10日間で78円なのである。血湧き肉躍る名作映画が78円。デフレの極みで泣けてくる今日この頃だが、とにかく名作に触れる機会の敷居が下がるのは素晴らしいのではなかろうか。ともかく借りてきて見たんだけど、古き良き時代の美化された過去に彩られちゃって、今見たらやっぱりウン十年前の映画なんだから、それなりの出来だったガッカリだよ見なきゃよかったよなんて後悔先立たず、などとなったらどうしようと思ったのは杞憂杞憂また杞憂、初めから終わりまでハラハラドキドキ全力なのであった。いやー面白かった、今見ても全然古さを感じないなどと使い古された表現だけど、マジでそう。難攻不落の要塞をスペシャリストのチームが限られた時間内で破壊しなければならない、古典的な(いや古典なんだけど)話なんだけど、ちなみにテレビシリーズ第一作の『宇宙戦艦ヤマト』で冥王星前線基地の反射衛星砲を破壊するためにチームが送り込まれるところは絶対にこの『ナバロンの要塞』を参考にされてると思うよ。とにかく、難攻不落を陥落させるプロの仕事に感服する、ガキの頃とはまた違った、大人の視線で見て感動したのであった。感動したからツーリングに行くことにした。
気がついたらもう夏になっちゃってた。前回の出動が4月だから、もう3ヶ月くらい乗ってないことになるんだけど、ご存知のようにこのご時世、世界的な逼迫した情勢もありまして、それに加えてこのところの長梅雨、ストレス溜まるわー。がしかし、ようやく開けた梅雨なんで、早速走りに出かけよう。で、先日、CBR600RRを出撃させたんだけど、天気予報が晴れ時々曇りでところにより豪雨の不安定な天気なんで、近場をうろうろするしかなかった。がしかし、今日はもうそんなこと言っとれんぜ。不安定な天気だろうがなんだろうは走りきってやるぜ。旗艦CB1300SFライアン・ストーン号の出撃だ。誰にもオレを止められないぜーなどとひとり盛り上がってたんだけど、当日の朝は、目覚まし時計がなり続けて止まらなくなるトラブルに遭遇し、なぜ止まらないかネットで調べたら、どうやらパソコンに接続して設定を変更しなきゃならないらしいので、目覚まし時計をパソコンに繋いで設定ファイルを開いて時間を確認してベルを止めようともがいていたら目が覚めた。なんだ夢か。しかし寝坊していた。慌てて起きたらまっちゃん製コロッケマフインスーパーヒートモードを食って歯磨いて顔洗って洗濯して洗濯干して猫トイレ掃除してなどと色々やらなきゃいかんことをやったら、メッシュレザーの上下に着替えて実家新型ガレージに行くと、久しぶりの出撃に、空気圧の調整(というか空気を入れる)とチェーン給油をして、フクピカのパチモンで磨いたらガレージから引っ張り出してエンジン一発始動! 吠える最強HONDAインラインフォア! 3ヶ月にブランクなぞなんのその、出撃だぜ!
ギュイーンと走って、やはり空気圧がしっかりしてるとコーナーリングが違うぜ。ヒラリヒラリと走っていつものコスモ石油に来たら、速攻で給油する。世界情勢のおかげてガソリン超高騰時代なんで、レギュラー148円なんてアホみたいだよ。このデフレ時代になんてことだ。泣けてくる。満タンに給油して出発だ。ちなみに230キロくらい走って11リットルくらい入った。
コスモ石油を出たら国道19号線を多治見方面に激走する。今回の目的地は高山である。毎回毎回、代わり映えしないコースだと思った輩は情弱だ、なぜなら、今回は記念すべき高山ツーリングになるからだ。知ってるライダーは知っているだろう。ついに、全国3000万人の高山好きライダーにとっては悲願も言うべき、宮峠トンネルが開通しているのだ! 今回はその初めての宮峠トンネルを激走するツーリングなのだ! 思えば初めてバイクツーリングで高山を訪れたのがウン十年前、当時はHONDAの最新鋭ロードモデルCBR400Fに乗ってたんだけど、それで初めての遠乗りツーリングだったんだけど、いやーもう免許取り立てのへっぽこひよっこライダーでして、それが150キロも離れた、一度も行ったことが無いところまで行こうというのだから、そりゃあもう緊張に緊張して、今では考えられんくらい重装備で行ったよなー、そして初めて遭遇する、飛騨地方の国道最悪な難所、それが宮峠なのであった。久々野から一ノ宮の間わずか4キロで標高782メートルの急上昇をつづらおれのカーブが連続して、まさしく、へっぽこひよっこライダーにとっては魔境のような峠なのであった。しかも幹線道路である41号線は交通量も多く、大きなトラックもビュンビュン走っているわけで、その間を走るわけだから、ビビってトロトロ走ってたらガンガンに煽られる必須、まさしく死にものぐるいで走った記憶しかないのである。そんな恐ろしい人外魔境の宮峠が更に極悪非道な真改造を受けるのがバイク全盛期の80年代、グルーミング加工と呼ばれる舗装路に溝が入れられる仕様、バイクにとってはデストラップ以外の何者でもないあの溝が、事もあろうに難所の宮峠にも掘られちまったんだよ。真っ直ぐ走っててもハンドル取られて危なっかしい溝ほり道路を急勾配の急カーブ連続ヘアピンカーブに掘るという、脳みそ腐ってんじゃねーのかと思える悪行をしやがって、これが日本の官僚のお仕事ってやつだよ。危険では? という質問に、白バイ隊員が走っても大丈夫だったから大丈夫ですといけしゃあしゃあと答えてたらしいなー国土交通省の偉いさん、そりゃそうでしょ、白バイですよ、世界一の乗車技術ですよ、そんなもん溝があったくらいでどうってことないわな。こちとらUターンもまともにできないへっぽこひよっこライダーだぞクソ。チクショー。しかし、掘られた溝が埋められることもなく、グルーミングなどという技術は時の彼方に忘れ去れて、放置状態、もはや未来永劫この道はこのままなのだろう。故に、毎回、高山に行くときは、宮峠の侵入前には後ろに速そうな車がいないこと、とろそうな車の後ろにつくこと、それらを十二分に吟味しながら侵入するようにしていた。防衛手段だよ。間違ってもあんなところで事故ったら敵わんからな。幸い、事故の多い区間らしいんだが、事故を見たことももちろん事故に遭遇したこともなかった。しかし、いつまで高山行きツーリングの難所越えが続くのか、そう思っていたところに、トンネル着工のニュースが入って、いやーもうね、早く開通してください頑張って早く開通してくださいと、毎回毎回、そこを通るたびに応援してたんだよ。それがついに、悲願達成の日がやってきた。いや、なんにもしてないから達成と言っても、みんな工事をしてくれた人々の栄光なんだけど、いやー本当によかったですよ。マジ感謝感激です。まさしく、ああ宮峠、なのであった。そこへ行くのだよ。この何年かのツーリングとしては、まさしく記念すべき、時代の革新を体験できるツーリングなのである。いやがおうにも盛り上がりまくるのであった。
盛り上がりまくりなんで、ガンガン走っていくのであった。いつもならちょこちょこと止まって、休憩してたけど、今回はそんなのまるで無し。いつものルートで走って川辺で国道41号線に合流すると、あとはひたすらかっ飛ばして行く。昨今の諸事情かどうかわからんけど、交通量が少なくて、カンカン照りの青空の下、実に開放的で、これ以上ないと言えるようなシチュエーションなのであった。実に快適で素晴らしいツーリング日和なんだこれが。故にバイクがいっぱい、うじゃうじゃ湧いてきてる。七宗付近の長いこと続いている工事の片側交互通行を過ぎたあたりで、後ろから現れたのがドカティのモンスターだった。ふっ、ドカティのモンスターか歯磨きのサンスターかしらねえが、世界のHONDAに喧嘩を売るとはいい度胸だぜ。今日は記念すべきツーリングなんだから、その記念ついでに見えなくしてやるぜ。アクセル全開、一気に加速するインラインフォア! うなるエクゾースト! 跳ね上がるタコメーター、ついて来れるか! そしたらモンスターはコンビニに入っていった。ふっ以下略。ああ、毎回書いてて虚しくなるなあ。そろそろ消えるパターンもネタ切れだ。
ということで、いつもなら休憩している七宗の道の駅も通過、下呂の池公園も通過、荻原のメロディ公園も通過、順調に走って昨年の豪雨被害で陥没した国道の復旧工事現場まで来た。これが想像以上に復旧していた。工期が7月末までと表示されていたけど、もうほとんど完成してた。素晴らしいよ。道路工事の皆さん感謝です。通過しながら眺めたら堅牢な防壁が完成してた。今度はちょっとやそっとの豪雨くらいではびくともしないぞ。工事現場を通過したら、行きつけの喫茶店サンマルティンもしっかり営業してた。駐車場も満車だった。よかったよかった、このご時世、何かと飲食店には辛い仕打ちが続いているけど、店を閉めますなんてことになってたら悲しいもんな。このお店、初めて高山ツーリングした時に昼飯食ったお店だから、思い入れのある店なんだよ。でも今日は通過するけどな。だって午後からゲリラ豪雨がくるかもしれんから午前中に帰らないかんもんね。
道の駅渚も通過した。恒例の電光掲示板の写真も撮ってない。ちなみに気温が33度だった。めちゃ暑いじゃん。でも体感はそうでもないんだよね。ちょっとカラッとしてて、風もあるからかな。などと思いつつ走っていたら、いよいよ宮峠が近づいてきた。交通量が少ないので、悠然と走っていくと、ついに、その全貌が明らかになるのだ! と言っても、まあ、普通にトンネルなんだけどさ。入ってみたら、あっという間の1863メートル、まるでワープ航法のように、飛騨一ノ宮側に出たよ。ああ、感動の一瞬であった。まさしく感無量なのであった。これまでウン十年のライダー人生で最も難所であったところが、今はもうないのだ。高山行きで憂うべくところがないのだぞ。ガッハッハ、まさしくナバロンの要塞も陥落だ。一時期は宮峠を避けるルートで朝日村を経由してた時もあったけど、そんな小手先の小技など必要なないのだ。素晴らしい。ああ、素晴らしいたらありゃしない。あーこりゃこりゃ。宮峠、ああ宮峠、宮峠。芭蕉もどき。
こうして、ノンストップで高山陣屋までやってきた。高山市街に入ると、ちょっと暑さが気になってきた。恒例の朝市が開催されてたけど、観光客はいまひとつ少なかった。陣屋前の道路脇に路駐するクルマがズラーっと列を成してた。ランドマークを記念撮影した。ここまで2時間58分10秒、久々の最短記録だな。これも宮峠トンネルのお陰様だな。ミッションクリア、さっさと高山陣屋前を脱出する。幸いここまで天候も不安定になることもなく、セブンイレブンでポカリ水分補給、パン食ってお腹を満たした。
帰りも宮峠トンネルを走った。そして休憩一回のほとんどノンストップで猛暑酷暑の家に帰ってきた。
本日の出費
ポカリ 140円
パン 100円
カフェオレ 148円
本日のCB1300SFの走行距離 290キロくらい
累計のCB1300SFの走行距離 32900キロくらい
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