right here,right now 東北ツーリング #2

前日の反動のように起きたのは5時過ぎていた。ヤバイ。いや別にヤバイわけではないが、朝早く出撃できるのが素泊まりの良いところなんだけど、こんな時間に起きてたら意味ないじゃん。いや、意味ないわけではないけど、速攻で昨日買った朝食用のサンドイッチ食って顔を洗って荷物まとめてバイクに運んで積み込んで、チェックアウトだ。空はどんより曇っていて天気予報は晴れになってたけどほんんとうにこれから晴れてくるんだろうな。今日は昨年のリベンジ最重要項目の山寺攻略の日なんで、絶対に晴れてもらわんと困るんだよ。とにかく晴れてくることを祈りつつ、ホテルを後にする。
国道13号まで戻って、山寺方面に向かって行く。晴れてくる気配はまるでなく、最悪の事態が危惧されていたが、今回はとりあえずまだ雨が降ってきていないので、山寺付近で時間稼ぎすることにした。早く出てきて意味がないじゃん。いや、意味はあるぞ。もし山寺の山道を登るならサンドイッチだけではスタミナがないからな、時間があるならどこかでがっつり栄養補給しないかんぞ。そう思いながら走ってたら、ガストがあったけど、洋食の気分じゃないから、吉野家かすき家がないか、そう思って走ってたら、すき家があった。国道交差点高架の下だったので、一旦過ぎてその先の交差点で戻って、しばらく道に迷って、山形ビックナントカというスタジアムみたいなところの横を過ぎて、なんとかすき家まで来た。そこで朝ごはん定食を食った。生卵でパワーチャージ完了だぜ。山寺の山道なんぞ目じゃないぜ。しかし、天気は回復しないのであった。雨が降ってきそうで、悲観的な気配しかなかったのであった。しかし、人間腹が膨れると前向きになることができるのだ。人生に行き詰まって死のうと思ってた人が、最後に食った料理がうまかったのでもう一度人生をやり直してみようと思ったなんて話はザラにあるからな。その勢いで、もはや誰にもオレを止められないぜ。山寺一直線であった。
山寺は案内看板が細かく出てたので道に迷うことなく到達した。バイクを止めるところを探してたら、まだ時間が早いのでやっているところは限られており、車がたくさん駐車されているところを選んだ。愛想のいいおばちゃんが「バイクは200円ねー今ガレージ開けるからねー」と言って、ガレージのシャッターをあげて、そこに止めさせてくれた。これで200円とは有名観光地とは思えない出血サービスだな。素晴らしい。山寺バンザイ。バイクを止めて、山道攻略体勢を整えたら、おばちゃんが説明「登山口はまっすぐ行って突き当たりを右に曲がってまっすぐ行ったらあるからねー、あそこまで登るから」山の頂上付近を指差すと、そこにはかつて挫折した三徳山を彷彿させる寺院が山の壁面に張り付くように建立されていた。「え? マジ? あそこまで登るの?」「そうよーびっくりしたー? 1時間くらいで登れるから大丈夫よー」もうすでに敵前逃亡指定くらいなのであるが、女性の手前、男子たるものがカッコ悪いこと言ってられんので「べべべべべつにびっくりなんかしてないですよ」とゆーぜんと答えて出発した。

まだ時間が早いので参道商店街は開店してなかったから、道草することもできずに登山口まで来てしまった。もはや後戻りはできない。猪突猛進前進あるのみ。階段を上って行くと、大きなお寺があった。なんだもう着いたじゃん。楽勝じゃん。え、違うの? こっちなの? まだ歩くんだよ。左奥の参道を歩いて行くんだよ。長々と歩いて行くと、でかい城門みたいなところに出たよ。着いたじゃん。楽勝じゃん。え、違うの? 参拝料を払うの? え、ここが入り口なの? マジかよ、こんなの上って来たのにまだこれから入り口かよ。やめて帰ろうかな、とビビってたら、若いキレイなおねーちゃんのグループがやって来て「わーここから登るのねー」「すごーい」「かわいいー」とかきゃっきゃ言ってるので、そんな若い女性の手前、男子たるものカッコ悪いこと言っとれんので「ライダー1枚」と参拝料を払って遂に登山道に突入した。そこからの果てしない道のりはまさしく苦難の連続であった、もはやこれまでと何度も死線を彷徨いつつ、時々、まばゆい光に包まれて、ここは天国かそれとも地獄か、やっぱり悪いことばっかりやってるから地獄かなー、などということを繰り返し、死んだばーちゃんじーちゃんの声が聞こえたりもしたが、しかし、それでもなんとか、試行錯誤波乱万丈天上天河唯我独尊蝉の声を乗り越えて、つに山寺最終地点に到達したのであった。結局、晴れなかっったけど、晴れなかったから登れたんだろうな。もし晴れて気温が上がってたら、幽体離脱必須の危険な山道だったよ。やったオレはやったんだ。遂に山寺を制覇したぞ。これまであちこちで敵前逃亡してきたチキン野郎の汚名をこれで返上できるぜ。登った段数だけ煩悩を消すことができるこの山寺の参道、これでオレの煩悩も消え去り、聖人君子の新しいオレが誕生するんだ。これからはオレのことをヘンタイライダーではなくセイジンライダーと呼んでくれたまえ。

下山は速かったよ。とにかく階段を踏み外さないように注意して、踵あげて膝あげてしっかり着地して、と繰り返し繰り返し心の中で命じながら、速攻下山、だってすごい観光客が押し寄せて来てるもんね。まるで京浜東北線の通勤ラッシュ状態の参道登り道だよ。朝早く登ったほうがいいという情報は的確だったな。
下山したら、もちろん、山寺とセットになっているのがさくらんぼソフトである。山寺に登ってさくらんぼソフトを食うという、テレビで紹介されてたことをやりたくて、そのためだけに来たんだもんねー、ソフトのお店に行って、オヤジさんに「山寺に登っってさくらんぼソフトしにきました」と言ったら「そうです、それが正しい参道です」と絶賛されつつ、さくらんぼソフトを食った。めちゃうまかった。最高だった。人生一番うまいソフトだった。ミッションコンプリーツ。では観光客ラッシュになりつつある山寺を脱出する。
脱出して来た道を戻って国道13号に出たら、まずはコンビニ水分補給と思って走って行ったら、セブンがなくてローソンローソンファミマと現れて、次がセブンでなくても諦めて入ろうと思ったらファミマだった。仕方がないのでそこに入って、100円コーヒーを飲みつつ、新店だったのでイートインコーナーがあり、そこで座って休憩がてら飲んだ。次の目的地、銀山温泉までの所要時間ルートなど調べて、行けそうなんで行くことにした。

国道13号線をしばらく走って、銀山温泉の看板を発見、ここも有名観光地なんで、細かく誘導案内表示があり、道に迷うことなくたどり着いた。たどり着いたけど「混雑していますので誘導員の指示に従っってください」とでかい看板があって、誘導員に聴くと「ここでバイクを止めて後は歩いてください」「バイクはそこに止めて」そこって言われたのが砂利の斜めの道路脇、マジかよこんなところ止めるのかよ嫌だな帰ろうかなと思ったが、わがままな観光客みたいに思われるのもしゃくなんで文句を言わずに止めた。そこから、どこをどういうふうに歩けばあの銀山温泉の風情ある千と千尋の神隠しの世界に入れるのかと思っていたが、駐車場に止めた観光客が大勢ゾロゾロと歩いて行くのでその行れるに加わって、わけもわからず歩いた行った。なんか単なる山の中にしか見えないんだけど、どこにあんな摩訶不思議な世界があるのかと思いつつ、まだ歩くのかよもういい加減やんなってきたなーとおもったくらいに、それっぽい景色が現れた。まあ、いわゆる、山の中の秘湯、秘境温泉の類になるんだろうけど、渓谷に温泉街があるんだけど、どうなの、近く前降りてみて、ようやく、ああ、なんとなくそんな感じがするかなあ、たしかに温泉街としてはこんな山奥の渓谷に、こんな古い町並み?飛騨高山の街並みとかうだつの美濃の街並みみたいなのが忽然と現れるのがスゴイけど、ごめんよー事前にキレイな写真を何度も見てるもんで、なんかコレジャナイ感が満載になっちゃって、いや、すごくいいところなんだけどさ、なんかもっと別次元の世界みたいなのを期待してたんで、ちょっとだけガッカリだった。いや何度も言うけど、いいところだろ思うよ。これから来るみなさんは、期待しすぎは禁物です。決して千と千尋の世界ではありません。人間の温泉街です。あしからず。

さっさと帰ることにして、バイクに戻ったが、ここで緊急事態が発生した。バイクがやばい。砂利の傾斜地なんていう最悪のロケーションに止めたもんで、動かへん。しかも満載積載量にガソリン給油したばかり、砂利だから踏ん張りが聞かないもんで足も滑ってばかり、アスファルトとの段差が越えられず、ニッチもサッチもいかなくなっちゃったよ。必死に汗だくになりながら何度もバイクを揺らして勢いをつけ、倒れそうになる危機を乗り越え、これ以上ないくらい緊張感あふれるリキを入れて、なんとかバイクを砂利の傾斜地から脱出させた。死ぬかと思った。クソ。もうこんなとこに二度と来るか。まあ、銀山温泉側ももうこんでええわと思ってるだろうけどさ。だってなんも金落としていかん見てるだけのクソ観光客だったもんね。ごめんねー。
遭難しかけた銀山温泉を後にして、国道13号に戻ったら、一路、次の目的地、盛岡市を目指す。天気がバリバリに快晴になって来たもんで、もうこうなるとライダーってのは走ることに命をかけるような、ひたすらに国道13号線を走り続けて、どんどん走って、ずんずん走って、一面に広がる青々とした田んぼと雄大な山並みの中を走る走る走る、素晴らしいこれぞ東北の醍醐味だよな。北海道はこうはいかんもんね、だって田んぼがないからな。イモとかタマネギとかの畑はたくさんあるけどさ、北海道は米が弱いから稲のこの時期の青は無理なんですよ。こんな風光明媚な中をバイクで疾走できることに感謝感謝。
国道13号から県道11号を経て国道105号角館を通って国道46号線で盛岡市までやって来た。盛岡市手前で渋滞に遭遇したが、予定時間前にホテルにたどり着いた。バイクは建物の横の駐車場に止めるんだが、そこが傾斜してて、いやー今日は傾斜ばっかだな、舗装してあるからいいけどさ。バイクを止めて、荷物を降ろしてチェックインする。フロントのおねーちゃんがハイクオリティで、クールな美人タイプと愛想のいい可愛いタイプと揃えてくるなんてよくわかっってるじゃないですか社長。ホントはこんな斜めは嫌だと文句を言おうと思ったんだけど、ハイクオリティな女性の手前、男子たるものがカッコ悪いこと言ってられんので言えんかった。でも、明日朝早いので隣に車を止められると困ると言っておいた。
部屋に入って荷物を整理したら駅前に出動する、行き先は決まってるのだ。昨年食えんかった盛岡冷麺食うのだ。昨年は雨続きで寒くて盛岡冷麺どころじゃなかったからな。今年は、おかけ様で暑かったんで、でも道路脇の電光掲示板最高気温の表示は31度くらいまでだから、38度39度がザラの地元に比べたらマシだよな。駅の方に歩いて行ったら、盛岡駅は昨年と違って西側から近づくんだけど、なにこの天国というくらい電車ガンガン走ってるじゃん。東北新幹線もガンガン走ってるじゃん。晩飯の盛岡冷麺そっちのけで見入ってたら、極め付けは銀河鉄道のSLが、本日のダイヤを終えて戻ってきたのに遭遇、C56ですよ、動態保存の! カンドーもんだったよ。残念ながら土日しか走らないからなー。でも見れたからよかった。

よかったよかった。あとは盛岡冷麺だ。昨年、食えんかった店まで行くと、昨年ガラガラだったのに、今年は今日は満員御礼、順番待ちになってた。すごいな。テレビで紹介でもされたのか。店の人がてんてこ舞いで対応してたけど、ぼーっと立って待ってたら「何名様ですか」「ひとりです」「お一人様ですか」店を見渡し、一席だけ空いてるカウンターを示すと「こちらでどうぞ」座って速攻注文した。で、待ってたら、急にザワザワしだすので何かと思ったら、店の半分の席が一つのグループだったんだな。その人たちが勘定済ませて出て行くと、ガラッとなった。でも待ってる客ですぐ埋まった。やっぱり人気なんだ。客は観光客か里帰り客のようだな、荷物でわかる。しばらく待ったら盛岡冷麺がやってきた。注文の時「辛さはどうしますか」というので「そんなに辛いの?」「普通で中辛です」と言うので普通にしておいたけど、どんなもんだろうか。スープをすすったら「げ」辛かった。でも美味い辛いだった。で、食ったらデラうまかった。スイカとか色々変なもんが入ってたけど、全然違和感開くてデラうまかった。盛岡冷麺サイコー。

食ったらさっさとホテルに戻って風呂に入って寝た。


本日の走行距離 304.4km


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